親子のきずなが生んだ念願の初個展 ひたちなか市の小口元吉さん
ひたちなか市佐和に住む小口元吉さん(71)が、19〜24日に同市共栄町のサザコーヒー内ギャラリー・サザで初個展を開催する。ガンで闘病中の小口さんを力付けたいと、息子の勇人さん(43)と智英さん(38)が尽力し、周囲の協力を得て実現した。油絵で風景画を描き続けた元吉さんの夢を親子のきずながかなえる。
「アトリエに入ったら、食事する間も惜しんで一日中夢中になって描いていましたよ」と妻の美代子さん(65)。「父の絵を改めてじっくりと眺めました。自己流ですが上手だと思います。
弟と『自分たちの子供にオヤジの才能が遺伝しないかなぁ』と、会う度に話してます」と勇人さん。
子供の頃から絵が好きだった元吉さんは、社会人になると同時に職場の絵画同好会に入会。
そこで油絵の技術を学び、グループ展に出品するなどして技術を磨いた。市の勤労者美術展で連続入賞し、市内の会社、福祉施設などにも展示されるようになった。頼まれれば、ただ同然で描いたことも。
「すごく幸せなんだよね、絵を描いている時って」と元吉さん。絵の話をする時は病気を感じさせない明るさが漂う。創作活動を振り返り、確信を持ってこう語る。「絵は描くべきですよ。絵を通じて、季節の雲、この辺りの菜の花はいつ頃咲くのかとか、分かったことがたくさんあるんです。絵を描いて、世の中の四季の移り変わりをもっと感じましょうよ」
定年退職後は自宅にアトリエを構え、会社の寮の寮監を務める傍ら、本格的に創作を始めた。
水のせせらぎ、閑静な山など、琴線に触れる風景の写真や映像を見つけては、イメージを膨らませ、カンバスに向かってきた。その頃から、個展を開きたいという、漠然とした夢を抱いてはいたが、「技術も金もない」と本気で考えることはなかった。
昨年7月、左足に痛みを感じ、検査をすると肝臓ガンと判明。すぐさま摘出手術をしたが、脊髄への転移が見つかった。痛みや不安に襲われ、落ち込む父親の姿を見て、勇人さん、智英さん兄弟は
「オヤジの夢をかなえてやりたい」と、以前から温めていた計画を実行に移すことに。
何度か足を運んだことのあるギャラリー・サザに個展の開催を申し込んだのは昨年11月末。その時点で1年半先まで予約が埋まっていた。
しかし、事情を必死に説明する兄弟の思いを受け止めたギャラリー担当の清水幸雄さんが出展予定者らに掛け合ったところ、予約していた枠を譲渡してくれる人が現れた。周囲の善意に包まれ、初個展「小口元吉 絵画展」が決定した。
「個展中も親戚が一丸となってやってくれる。夢だった個展が開けることも喜びですが、『子供っていいなぁ』と感激しましたよ」と元吉さん。現在は歩行も困難な状態だが、勇人さんらはワゴン車を購入し、個展会場へ連れて行こうと準備している。
個展では、自宅や親戚宅に飾られていたF6〜F50号の国内の風景画(油絵)25点を展示する予定だ。入場無料。