地元の今をカメラに収める〜写真集「うぶすな巡り」を出版した鹿嶋市の大鷲則子さん
鹿嶋市在住の大鷲則子さん(75)が地元を5年間にわたって撮り続けた作品をこのほど、写真集「うぶすな巡り」として出版した。則子さんの趣味を理解し、いつも傍らで協力してくれていた夫の五郎さんが亡くなる前に言った「もうお前の写真を見られなくなるのかな」というひと言が、出版を決意させた。
「うぶすな(産土)」とは生まれた土地を意味し、「隠れてっけどな、土と水を守ってんだよ、うぶすな様は」と言っていた祖母の口癖でもある。大鷲さんはこの言葉を胸に、工業地帯や鹿島灘、鹿島神宮の神事など、地元の今にカメラを向けてきた。
「生活の中で見慣れた景色は被写体としてとらえにくい」と、撮影の際は同じ被写体を撮るために何度も足を運んだ。「今はデジタルカメラも良いものが出ているようですが、たくさん撮れるので緊張感がない気がしますね」とフィルムにこだわる大鷲さん。
独特の感性でとらえた迫力ある作品は、長年通った東京の写真塾の先生に相談し、100枚余りに絞り込んだ。
小学校で教諭をしていた大鷲さんは、その当時にはカメラとの縁はなかった。定年を機に友人の勧めで写真を始め、水戸市内で写真講座を受講。その後写真クラブに入会し、6年後に初めての個展を開くと、写真の世界にのめり込んでいった。
「個展では写真を通して自分を見られている気がした」。見ず知らずの人たちの率直な感想が聞ける会場は、自分を知る場所だった。「今日も勉強会に行くかという気持ちで出掛けた」と振り返る。
勤めている時には上司の指示で動いていた自分が、自分の作品を自ら選び、見ず知らずの人の評価を直に聞く。「これが本当の自分の人生」と感じた。
今回の写真集は教諭時代に世話になった鹿嶋、神栖、潮来、鉾田地区の小・中・高校約80校に寄贈した。「図書室にでも置いてもらって、社会科や生活科の資料として使っていただければ」
次は生まれ育った神栖周辺を撮りたいという大鷲さん。「最終的には『人』が撮りたいんですけどね」と次作への意欲を語る。