新たな命古布に吹き込む〜常陸太田市のキルト作家・佐藤のり子さん
1月に東京ドームで開催された日本最大のキルトの祭典「東京国際キルトフェスティバル2008」で、常陸太田市大里町の佐藤のり子さん(57)が「第7回日本キルト大賞」の優秀賞を受賞した。地元の自然をモチーフに、古布を使って仕上げた作品で、独創性が高く評価された。16日まで北茨城市大津町の県天心記念五浦美術館展示室Cで「創作古布ハンドキルト個展」を開催している。
「入れたい場所に針を入れるし、曲がっていたっていいのよ。立派なキルトっていうものは、私にはないの。生活の一部だから」
佐藤さんは全日本綜合手工芸講師会パッチワーク科講師でもあるが、自身の作品はキルトの伝統的な表現形式にとらわれない、絵画的なものが多い。「地元のいい所を作品に残したい」という思いが強く、テーマの大半が自然だ。要介護の父親と自宅で暮らす時間が長く、常陸太田の自然を身近に感じたからだという。
キルトを始めて11年。創作初期から古布が作品のベースだ。自宅一室に山積みとなっている衣装ケースには、打ち掛け、筒描(つつがき)などの貴重品から庶民の敷布団など日用品まで、今まで収集した古布がぎっしり詰まっている。ほとんどが穴開き、シミ、色あせのオマケ付き。古布の下準備には最低5回の洗濯など手間が掛かる。
優秀賞を受賞した「向日葵の花」にも、それらの古布が縦横無尽に使われている。「とにかく古布の色が好きなのね。あせていても良し、ほどけて糸状になっていても良し。古布と対話しながら、一針一針刺すうちに、すべて持ち味になるんです」。前回の個展では、たった一切れの古布をきっかけに、1時間もの思い出話を話してくれた来場者もいた。「捨てられる運命だった古布、貴重な古布を作品にすることで、もっとその命を続けさせたい」
今展は県内では2度目の個展。受賞作はもちろん、第60回記念創造展入選作、初期作品などの他、新作5点を含む19点が展示される。帯、裏側にもキルトが施された大作が並ぶ。会場は生き方に共感を持つ横山大観ゆかりの美術館で、足しげく通うあこがれの場所だ。「多くの人に楽しんで欲しいです。キルトを通じての人との出会いや再会が楽しみです」。古布で織り成す独創的な作品で、佐藤さんはキルトの新たな可能性を開く。